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意匠審決の読解11

【11】不服2021-611

意願2020-7485「自動車用タイヤ」拒絶査定不服審判事件

原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。

意匠法第3条第1項第3号(新規性)

【弊所メモ】部分意匠、大きさは共通、位置および範囲が異なる、基本的構成態様、具体的構成態様、需要者(使用者と取引者)、特に注視して観察、通常取り得る形態、視覚的印象、斜め方向からは観察可能

 


第1 対比

1 意匠に係る物品の対比

 いずれも「自動車用タイヤ」であるから、一致する。

 

2 本願部分と引用部分の用途および機能の対比

 いずれも自動車用タイヤのトレッド部の溝部分であり、トレッド部は、自動車の重量を支え、路面からの衝撃を吸収し、…部分であるから、用途および機能が一致する。

 

3 両部分の位置、大きさおよび範囲の対比

 両部分は、いずれも全体が環状体をなすタイヤの、横方向溝部を除く、外周を周方向に略帯状に並行して一周する3本の溝部分であって、

 それぞれ大きさは共通するが、位置および範囲については、

 

 正面視で左側の溝部分(左側溝部)は、

 本願意匠は、位置が全体の横方向の左から約4/13で、範囲は、横幅の約1/13幅の縦方向溝部であるのに対して、

 引用意匠は、位置が全体の横方向の左から約1/3で、範囲は、横幅の約1/15幅の縦方向溝部である点で相違し、

 

 正面視で中央の溝部分(中央溝部)は、

 本願意匠は、位置が横方向の中央よりもやや左寄りの左から約2/5で、範囲は、横幅の約2/43幅の縦方向溝部であるのに対して、

 引用意匠は、位置が横方向の略中央で、範囲は、横幅の約2/37幅の縦方向溝部である点で相違し、

 

 正面視で右側の溝部分(右側溝部)は、

 本願意匠は、位置が横方向の中央よりもやや右寄りの左から約4/7で、範囲は、横幅の約1/16幅の縦方向溝部であるのに対して、

 引用意匠は、位置が全体の横方向の左から約2/3で、範囲は、横幅の約1/15幅の縦方向溝部である点で相違する。

 

4 両部分の形態の対比

(1)両部分の形態の共通点

基本的構成態様

 (共通点A)両部分は、タイヤの外周を、近接して周方向に一周する、正面視で縦方向の3本の蛇行する溝部である点、

具体的構成態様

 (共通点B)両部分は、3本の溝部が正面視で縦方向に同間隔で蛇行し、中央溝部が左右側溝部に比して最も細いものである点で共通する。

 

(2)両部分の形態の相違点

具体的構成態様

 (相違点a)正面視の蛇行形態について、本願部分は、正面視で蛇行の右側の山部が11個看取できる縦長の緩やかな蛇行形態であるのに対して、引用部分は、正面視で右側の山部が29個看取できる縦に短く細かい蛇行形態である点、

 (相違点b)溝部の形態について、本願部分は、断面視で略隅丸逆等脚台形状の溝部であるのに対し、引用部分は、断面視で底が丸みを帯びた略谷状の溝部である点、

 (相違点c)蛇行山一単位(谷部から谷部)に対するそれぞれの溝部の縦横長さ比について、本願意匠は、左側溝部の蛇行山一単位の縦幅に対する横幅の長さ比が約5.4:1で、中央溝部は、約9:1、左側溝部は6.8:1であるのに対し、引用部分は、左側溝部の蛇行山一単位の縦幅に対する横幅の長さ比が3.3:1で、中央溝部は、3.6:1、右側溝部は3.3:1である点、

 (相違点d)3本の溝部の横幅の長さの比率については、左から順に本願意匠が約4.5:3:4であるのに対し、引用部分は、約11:10:11である点、

 (相違点e)横方向の溝部による内壁の除外部について、両部分は横方向の溝部を除く部分であるから、溝部内壁には、横溝部が除かれた箇所が存在し、本願部分の左側溝部は左側の蛇行の谷部の底付近および左側の山部と谷部の切り替え付近の内壁から横溝形成箇所を除き、中央溝部の内壁に除外部はなく、右側溝部は右側の山部頂点の内壁から横溝形成箇所を除いているのに対し、引用部分は、左側溝部は左側の山部頂点および右側の山部頂点内壁から横溝形成箇所を除き、中央溝部は左側の山部の谷部寄りおよび右側の谷部の山部寄りの内壁から横溝形成箇所を除き、右側溝部は左側の谷部底付近の内壁から横溝形成箇所を除いたものである点で、両意匠は相違する。

 

第2 判断

1 意匠に係る物品の類否判断

 両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

 

2 両部分の用途および機能の類否判断

 両部分の用途および機能は一致するものであるから、同一である。

 

3 両部分の位置、大きさおよび範囲の評価

 両部分の位置、大きさおよび範囲については、

 両部分は、物品全体の形態の中における大きさは、一致するから同一であるが、

 それぞれ位置については、引用意匠が左から約1/3、略中央、約2/3(右から約1/3)と横方向の中央に対し線対称に配置されているのに対し、本願部分は中央に対して左寄りに配置され、横方向の中央が、中央溝部と右側溝部間に位置する点は、本願部分の特徴でもあるから、範囲については多少の相違にとどまるものの、類否判断に一定程度の影響を与えるものである。

 

4 両部分の形態の共通点および相違点の評価

 両意匠の意匠に係る物品の需要者は、主に、その使用者である一般ドライバーや自動車メーカーおよびタイヤ販売業者等の取引者がその需要者であって、発進、加速、減速および制動時の力を路面に伝えるトレッド部の溝部等の形態を特に注視して観察するといえる。

(1)両部分の形態の共通点

 (共通点A)および(共通点B)は、いずれも両部分全体の態様に係るものではあるが、周方向に一周する3本の縦方向の蛇行する溝部とすることも、同間隔で蛇行し、中央溝部が左右側溝部に比して最も細いものとすることも通常取り得る形態であるから、これらの共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さい。

(2)両部分の形態の相違点

 (相違点a)および(相違点c)について、(相違点a)は、溝部の具体的な蛇行態様であって、正面視での比較であるが、本願部分は、正面視で蛇行の右側への山部が11個看取できるのに対して、引用部分は、29個看取できる点は、溝部の視覚的印象に大きく関わり、また、(相違点c)の蛇行山一単位に対する溝部の縦横の長さ比の相違も、引用部分が横幅の長さに対し短く細かな蛇行形態であるのに対し、本願意匠がより縦長で緩やかな蛇行形態であるとの印象を強め、溝部の形態を特に関心を持って注視する需要者にとって、全く別異の印象を与えるものであるから、いずれも両部分の類否判断におよぼす影響は大きい。

 次に、(相違点d)の3本の溝部の横幅の長さの比率については、本願意匠各々の溝部の横幅の長さがそれぞれ相違するものであるのに対し、引用部分は左右側溝部は同幅で、それに比して中央溝部が僅かに細く、注視してそれと分かるような各々の横幅の長さの差である点は、溝部の具体的形態の印象に関わり、類否判断におよぼす影響は大きい

 そして、(相違点b)および(相違点e)は、溝部の断面視での形態および内壁の形態であって、正面視で看取し難いものの、斜め方向からは観察可能であって、溝部内の具体的態様に関わるから、両部分の類否判断におよぼす影響は一定程度あるものである。

 

5 両意匠の類否判断

 そうすると、形態における相違点の(相違点b)および(相違点e)は両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度あるものであり、(相違点a)、(相違点c)および(相違点d)は、類否判断に及ぼす影響は大きいものであるから、(相違点a)ないし(相違点e)の両部分の類否判断に及ぼす影響は、総じて大きいものであって、両部分の類否判断を決定付けるものであるのに対して、形態の共通点の(共通点A)および(共通点B)の両部分の類否判断に与える影響は、いずれも小さく、それら(共通点A)および(共通点B)があいまっても、共通点の両部分の類否判断に与える影響は総じて小さく、相違点が共通点を凌駕し、両部分の類否判断を決定付けるものであるから、両部分は類似しない。

 したがって、両意匠は、意匠に係る物品並びに両部分の用途および機能は同一であり、大きさも同一であるが、両部分の位置および範囲は相違するものであって、類否判断に一定の影響を与え、また、形態においては、両部分は類似しないものであって、これは、両部分の類否判断を決定付けるものであるから、本願意匠は引用意匠に類似しない。

 


関連情報

 


弊所独自の観点で、編集・加工を行っています。
正確な全文は、審判番号から審決公報をご確認ください。
(作成2023.10.30、最終更新2023.10.30)

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意匠審決の読解10

不服2015-13721

意願2014-18744「コップ」拒絶査定不服審判事件

原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。

意匠法第3条第1項第3号(新規性)

【弊所メモ】意匠に係る物品が共通、引用意匠はコップと言って差し支えない、基本的構成態様、具体的構成態様、細身とずんぐり、円錐台形状と円筒形、約半分の部分と約4分の1部分、帽子の鍔状と鳥のくちばし様、突起の有無、一見若干の共通感、異なる目的を合理的に達成させるための態様、使用の目的が異なることを想起させる態様

 


1 意匠に係る物品について

 本願意匠の意匠に係る物品は「コップ」であるところ、

 引用意匠の考案の名称は「喫飲用食器」であるが、…飲み口部を備えた飲みやすい飲食用の食器であって、…おおむね細い円筒形であることを加えて勘案すると、引用意匠は「コップ」と言って差し支えないものであるから、

 両意匠の物品は、共通する。

 

2 形態について

(2-1)共通点

 基本的構成態様において、周面から底面にかけて角丸とした縦長の略円筒形であって、具体的構成態様においては、開口上縁部の一部分を下り傾斜にしつつ、突出部を設けている点で、共通する。

 

(2-2)相違点

 具体的構成態様において、

 (a)全体のプロポーション(縦横比)につき、本願意匠は、相対的にやや細長いのに対して、引用意匠は、ややずんぐりとしている点、

 (b)周面の角度につき、本願意匠は、円錐台形状(下すぼみ形状)と直ちに分かるほど角度が付いているのに対して、引用意匠は、ほぼ円筒形と思われるほど垂直に近い点、

 (c)上縁部の、下り傾斜していない部分につき、引用意匠が、開いてやや外側に広がる態様としているのに対して、本願意匠は、そのような態様としていない点、

 (d)下り傾斜の部分につき、本願意匠は、側面視で上縁部の長さの約半分の部分であるのに対して、引用意匠は、約4分の1部分である点、

 (e)突出部の態様につき、本願意匠は、三日月状平面で、帽子の鍔状(つばじょう)としているのに対して、引用意匠は、垂直断面形状を先端に向かって徐々に小さくなる丸V字状の溝とした鳥のくちばし様としている点、

 (f)内底面の態様につき、本願意匠は、突起を1つ設けているのに対して、引用意匠は、突起を設けていない点、で相違する。

 

3 類否判断

 上縁部に突出部などを設けないのが通常であるこの種物品分野においては、上縁部の一部分に突出部を設けたのみで、一見、若干の共通感を生み出すものである。

 しかし、相違点(a)及び同(b)が相まって、本願意匠は、より細身であると感じさせる態様であるのに対して、引用意匠は、ずんぐりとした感じであるから、この点については、僅かに両意匠の類否判断に影響を与えるもので、

 相違点(d)及び同(e)に示した各々の態様は、本願意匠は、…傾斜倒立させる際に、より安定するようにしたものであるのに対して、引用意匠は、口内に注ぎやすいようにしたものであって、それぞれ両意匠の異なる目的を合理的に達成させるための態様であって、これらの相違点は、両意匠のそれぞれの使用の目的が異なることを想起させる態様と認められるから、両意匠の類否判断に強く影響を与えるものである。

 よって、その他の相違点を挙げるまでもなく、上記相違点がもたらす印象で、共通点が醸し出す印象をしのいでおり、見る者に両意匠が別異であると認識させるものであり、両意匠の形態は類似しないといえる。

 したがって、両意匠の意匠に係る物品は共通しているが、形態は類似しないから、両意匠は、類似しているとはいえない。

 


関連情報

 


弊所独自の観点で、編集・加工を行っています。
正確な全文は、審判番号から審決公報をご確認ください。
(作成2023.10.26、最終更新2023.10.26)

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意匠登録の種類・例【動画】

意匠登録の種類・例について、解説動画をYouTubeに投稿しました(6分29秒)。

意匠登録の種類、意匠登録の例を一挙にご紹介します。

全体意匠(完成品と部品)、部分意匠、関連意匠、動的意匠、秘密意匠、組物の意匠、建築物の意匠、画像意匠、内装の意匠についての解説です。

実際の登録意匠そのものではありません。

2023年10月現在の情報です。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。

 


意匠登録の種類・例【動画】

 


(作成2023.10.21、最終更新2023.10.21)
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特許か実用新案かの費用面からの検討【動画】

特許か実用新案かの費用面からの検討について、解説動画をYouTubeに投稿しました(8分17秒)。

特許か実用新案かを決める際、気になるのは費用の違いだと思います。ここでは、費用面に重点を置いて検討してみます。特許について減免措置(特許庁費用の軽減・減額)を受けられる場合や、実用新案について技術評価を請求する場合についても検討します。

2023年9月現在の情報です。特許庁費用は、改定される場合があります。最新の情報は、特許庁ホームページでご確認ください。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。

 


特許か実用新案かの費用面からの検討【動画】

 


(作成2023.10.13、最終更新2023.10.13)
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知的財産(知財)とは?【動画】

知的財産(知財)とは?について、解説動画をYouTubeに投稿しました(9分4秒)。

知的財産、知的財産権、産業財産権、工業所有権、特許権(特許)、実用新案権(実用新案登録)、意匠権(意匠登録)、商標権(商標登録)、著作権とは何か、それぞれの要点と、具体例をご紹介します。

ヤマザキビスケット株式会社の成型ポテトチップ『chip star(チップスター)』(登録商標)を例に、産業財産権の例を示します。商標以外は弊所作成の仮想事例が含まれます。

2023年10月現在の弊所把握情報です。法改正される場合もありますから、最新情報は、特許庁や文化庁などのホームページでご確認ください。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。

 


知的財産(知財)とは?【動画】

 


(作成2023.10.06、最終更新2023.10.06)
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知的財産(知財)とは?

知的財産、知的財産権、産業財産権、工業所有権、特許権(特許)、実用新案権(実用新案登録)、意匠権(意匠登録)、商標権(商標登録)、著作権とは何か、それぞれの要点と、具体例をご紹介します。

目次

 


知的財産とは?、知的財産権とは?

知的財産(知財)」とは、「(a)発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの」、「(b)商標、商号その他事業活動に用いられる商品又はサービスを表示するもの」及び「(c)営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報」をいいます(知的財産基本法)。

知的財産権」とは、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、育成者権などをいいます。

以下、代表的な知的財産権について、概要と具体例を示します。

 

特許権(とっきょけん)

  • 発明の独占実施が認められる権利
  • 保護対象は、技術的アイデア「発明」
  • 「物」の発明(各種装置、日用品、プログラムなど)
  • 「方法」の発明(製造方法、加工方法など)
  • 特許庁に特許出願して審査をパスしなければならない
  • 従来技術と同一でなく、従来技術から容易に考えられないものに特許
  • 特許権は、原則として、出願日から20年まで
  • インスタグラム>特許とは?特許までの流れ
  • 特許とは・特許の取り方
  • 特許解説

特許の例(鉛筆削り付きの走行玩具)
この発明について詳しくは、特許・実用新案の例3:文房具

 

実用新案権(じつようしんあんけん)

  • 考案の独占実施が認められる権利
  • 保護対象は、「物品の形状、構造又は組合せに係る考案」(物品に限る)
  • 特許庁に実用新案登録出願すると、無審査で登録
  • 必要に応じて審査(実用新案技術評価)を受ける
  • 出願日から3年以内なら、所定要件下、特許出願に変更可能
  • 実用新案権は、出願日から10年まで
  • 特許よりも安価だが、保護対象や権利行使等に制約
  • インスタグラム>実用新案登録とは?
  • 実用新案登録とは・実用新案権の取り方
  • 実用新案解説

実用新案の例(消しゴム付きのコンパス)
この考案について詳しくは、特許・実用新案の例3:文房具

 

意匠権(いしょうけん)

意匠とは(意匠登録の例)

 

商標権(しょうひょうけん)

  • 登録商標の独占使用が認められる権利
  • 登録商標を独占的に使用でき、類似範囲で他人の使用を排除できる
  • 保護対象は、商品やサービスに使用する「ネーミングやマークなど」(他人の商品やサービスと区別するのに用いるものを保護、商標に蓄積される「信用」や「ブランドイメージ」を保護)
  • 特許庁に商標登録出願して審査をパスしなければならない
  • 商標権は、10年ごとに更新できる
  • インスタグラム>商標とは?商標登録までの流れ
  • 商標登録とは・商標権の取り方
  • 商標登録解説

商標とは(商標登録の例)

 

著作権(ちょさくけん)

  • 小説、絵画、音楽などの「作品」を保護する権利
  • 創作により自動的に権利が発生するので、権利取得のための出願は不要
  • 著作権は、原則として、著作者の死後70年まで

 

その他

  • 不正競争防止法、地理的表示法、種苗法など

 


産業財産権の例(特許、実用新案、意匠、商標登録)

産業財産権」とは、特許権、実用新案権、意匠権、商標権をいいます。「工業所有権」とも呼ばれます。

知的財産権の内、特許庁への登録を必要とするものが産業財産権です。

特許庁に登録することで得られる独占排他権で、権利者のみが製造販売や使用等を許されます。

ヤマザキビスケット株式会社の成型ポテトチップ『chip star(チップスター)』(登録商標)を例に、産業財産権の例を示します(産業財産権の例)。商標以外は弊所作成の仮想事例が含まれます

産業財産権の例(特許・実用新案・意匠登録・商標登録の例)

特許の例

  • スナック菓子(成型ポテトチップス)
  • スナック菓子の製造装置
  • スナック菓子の製造方法
  • 包装容器
  • 包装容器の製造装置
  • 包装容器の製造方法

実用新案登録の例

  • (特定形状の)スナック菓子
  • 包装容器

意匠登録の例

  • スナック菓子
  • 包装容器
  • スナック菓子製造装置(成型用型)

商標登録の例

  • 「YBC」
  • 「chip star」
  • 「チップスター」

 


(作成2023.10.01、最終更新2023.10.02)
出典を明示した引用などの著作権法上の例外を除き、無断の複製、改変、転用、転載などを禁止します。
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特許か実用新案かの費用面からの検討

目次

 


特許か実用新案かでお悩みの方へ

特許出願にするか、実用新案登録出願にするか、お悩みではありませんか?

どちらにするか決める際、やはり気になるのは費用だと思います。

ここでは、費用面に重点を置いて検討してみます。2023年9月現在の情報で、弊所の見解が含まれます。

実際には、費用面以外も考慮する必要があります。次のリンク先もご参照ください。

 


特許か実用新案かの費用面からの検討

以前、「特許と実用新案の費用の比較」をしてみました。

出願から登録までのトータルの費用を比較すると、平均的な請求項数10の場合、次のとおりでした(2023年9月現在)。

◆特許の場合=213,900円
◆実用新案の場合(技術評価請求&訂正請求なし)=23,300円
◆実用新案の場合(技術評価請求&訂正請求あり)=76,700円

但し、中小企業や個人などは、特許の出願審査請求料と設定登録料について、軽減を受けられる場合があります。その場合、たとえば次のとおり安くなります。
◆1/2に軽減される場合(中小企業、大学など)=113,950円
◆1/3に軽減される場合(小規模企業(法人・個人事業主)など)=80,620円

 

実用新案技術評価を請求しない場合、特許と実用新案の価格差は歴然です。特許について、1/2や1/3への軽減を受けても、依然として価格差は大きいです。

実用新案技術評価を請求する場合でも、やはり特許と実用新案の価格差は歴然です。但し、特許について、1/2や1/3への軽減を受けた場合、実用新案との価格差は少なくなってきます。

つまり、「実用新案について技術評価を請求する場合」と、「特許について1/2や1/3への軽減を受けられる場合」とでは、特許と実用新案との価格差が少なくなります。そして、特許の方が、権利取得までの手続面(補正や不服申立て等の機会)、登録後の権利行使のし易さ、権利の存続期間などでメリットがあります。

そのため、もし当初から実用新案について技術評価を受けることが前提なら、しかも特許について1/2や1/3への軽減を受けられるなら、「特許は高い!」と思い込まずに、特許も検討してみてください。特許庁費用(特許印紙代)の差は、上記「緑の囲み枠」に記載のとおりですから、あとは代理人費用(特許事務所手数料)によります。

一方、取り敢えず技術評価を請求するつもりがないなら(そして将来も請求しないままなら)、あるいは特許について軽減措置を受けられないなら、実用新案の方が費用面で大きなメリットがあります。その場合、もし出願日から3年以内に技術評価請求したい状況(たとえば侵害品を排除したい状況)になったのなら、技術評価請求するか、あるいは要件を満たせば、特許へ移行できます。出願日から3年経過後は、特許への移行はできませんが、技術評価請求は可能です。特許の場合は、出願日から3年以内に出願審査請求しないと、出願は取り下げたものとみなされますが、実用新案の場合は、技術評価請求しなくても、登録料を納付する限り、登録を維持することができます。特許出願して審査請求せずに取下げ扱いになるくらいなら、実用新案権を維持するという手も考えられます。

なお、2022年の実用新案登録出願件数は4,513件ですが、実用新案技術評価書の作成件数は281件です。そのため、実用新案技術評価を請求しない方が多いといえます。実用新案技術評価を請求すると、「実用新案登録に基づく特許出願(特許への変更)」や「実用新案登録請求の範囲の減縮等を目的とする訂正(権利範囲の修正等)」が制限されるので、評価請求すべき機会(たとえば侵害品を排除したい状況)が生じるまで、温存することになります。また、出願・登録するだけでも一定の効果がありますから、評価請求は必須ではありません。すなわち、出願・登録することで、後から出願した他社に権利を取られることはなくなるし、他社を牽制することもできます(実用新案は意味がないのか)。

最後に、念のためですが、特許を選択した場合、登録前に実体審査を受けるため、必ずしも特許されるとは限りません。特許される場合でも、一回又は複数回の拒絶理由通知対応が必要となったり、審判請求が必要となったりすることもあります。つまり、出願経過によって費用が変わります。一方、実用新案を選択した場合、通常は登録になるでしょうが、技術評価が必ずしも肯定的(新規性や進歩性あり)とは限りません。費用の方は、特許よりも事前に見通しがつきやすいと思います。

 


【まとめ】特許か実用新案か

取り敢えず実用新案技術評価を請求するつもりがないなら、実用新案の方が圧倒的に低価格となる。将来的に技術評価を請求しても、通常、実用新案の方が低価格である。
当初から実用新案技術評価を請求するつもりなら、しかも特許について1/2や1/3への軽減を受けられるなら、特許も検討してみる。代理人費用(特許事務所手数料)次第であり、出願経過により費用が変わる。
費用面以外も考慮する。特許と実用新案の違い実用新案は意味がないのかをご覧ください。

 


関連情報

 


(作成2023.09.30、最終更新2023.10.01)
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特許と実用新案の費用の比較【動画】

特許と実用新案の費用の比較について、解説動画をYouTubeに投稿しました(9分47秒)。

特許と実用新案について、出願から登録までの費用を比較してみます。特許庁統計による平均的な請求項数10の場合で比較してみます。特許庁の減免制度を利用した場合についても解説します。実用新案について、技術評価請求と訂正請求をした場合についても比較してみます。

2023年9月現在の情報です。特許庁費用は、改定される場合があります。最新の情報は、特許庁ホームページでご確認ください。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。

 


特許と実用新案の費用の比較【動画】

 


(作成2023.09.28、最終更新2023.09.28)
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特許と実用新案の費用の比較

目次

 


特許庁統計による平均的な場合の費用を比較

特許と実用新案について、出願から登録までの費用を比較してみます。
特許と実用新案の違いの内、費用以外の違いについては、特許と実用新案の違いをご覧ください。

特許の場合、出願」だけでなく、「出願審査請求」や「設定登録料納付」など、段階に応じて費用が発生します。また、審査において特許できない旨を通知された場合、「拒絶理由通知対応」が必要となります。審査(拒絶理由通知対応)では、請求項(権利請求欄)が増加しない限り、特許庁費用の追加はありません。審査で拒絶査定がなされ、上級審である審判で争うには、別途費用がかかります。

実用新案の場合、基本的に「出願」時に費用が発生します。出願時に出願料だけでなく設定登録料も納付するので、出願時だけのご負担です。実用新案の場合、所望により実用新案技術評価とよばれる審査を受けることができます。その場合、「実用新案技術評価請求」に費用が発生します。その評価に基づき(登録が無効とされないように権利範囲を減縮するなどの)「訂正請求」ができ、その際、費用が必要です。

このように、特許の場合、少なくとも「出願」「出願審査請求」「設定登録料納付」の各段階で費用が発生する一方、実用新案の場合、通常「出願」の段階だけ費用が発生します。そして、実用新案の場合、(必須ではなく)所望により、「実用新案技術評価請求」や「訂正請求」ができ、その際、費用が発生します。

ところで、特許も実用新案も、権利請求するに際し、「請求項」と呼ばれる項に区分して、発明又は考案を特定します。請求項ごとに審査がなされ権利が付与されるため、請求項の数に応じて費用が変わる手続があります。特許庁統計によれば、平均請求項数は9.8です(2022年)。そのため、ここでは、平均的な請求項数10の場合を示しています。請求項について詳しくは、特許請求の範囲についてをご覧ください。

特許庁費用は、軽減又は免除される場合があります。大学、中小企業、個人などは、出願審査請求料や設定登録料などが、「1/2」、「1/3」、又は「免除」される場合があります。詳しくは、お問合せください。後掲の表では、これら減免がなされた場合についても比較しています。

手続を特許事務所(弁理士)にご依頼の場合、「特許庁費用(特許庁の印紙代)」の他、「代理人費用(特許事務所の手数料)」が必要です。代理人費用は、事務所により異なります。発生タイミングも事務所により異なることがあります。小山特許事務所の場合、一般的な費用は、「特許費用」や「実用新案登録費用」のページをご覧ください。打合せを通じてアイデアの内容を把握した上で、お見積りさせていただき、それに納得いただけましたら、正式にご依頼の流れとなります。

個々の手続費用については、後掲の「特許と実用新案の費用の比較表」のとおりです。要点だけを述べれば、次の囲み枠に記載のとおりです。

 

【要点1】特許と実用新案の費用の比較1(実用新案について審査を受けない場合:技術評価請求&訂正請求しない場合)

出願から登録までのトータルで、
特許の場合=213,900円、
実用新案の場合=23,300円(技術評価請求&訂正請求なし)

となります(平均的な請求項数10の場合)。

但し、特許の出願審査請求料と設定登録料について、費用の減免制度があります。その場合、特許の出願から登録までのトータル費用213,900円は、次のとおり安くなります。
1/2に軽減される場合(中小企業、大学など)=113,950円
1/3に軽減される場合(小規模企業(法人・個人事業主)など)=80,620円

なお、手続を特許事務所(弁理士)にご依頼の場合、別途、代理人費用(特許事務所の手数料)が必要です。

 

【ご参考】 2022年の実用新案登録出願件数は4,513件ですが、実用新案技術評価書の作成件数は281件です。そのため、実用新案技術評価を請求しない方が多いといえます。実用新案技術評価を請求すると、「実用新案登録に基づく特許出願(特許への変更)」や「実用新案登録請求の範囲の減縮等を目的とする訂正(権利範囲の修正等)」が制限されるので、評価請求すべき機会(たとえば侵害品を排除したい状況)が生じるまで、温存することになります。また、出願・登録するだけでも一定の効果がありますから、評価請求は必須ではありません。すなわち、出願・登録することで、後から出願した他社に権利を取られることはなくなるし、他社を牽制することもできます(実用新案は意味がないのか)。

 

【要点2】特許と実用新案の費用の比較2(実用新案について審査を受ける場合:技術評価請求&訂正請求する場合)

実用新案技術評価とその後の訂正も含めた比較をすると、
特許の場合=213,900円、
実用新案の場合=76,700円(技術評価請求&訂正請求あり)

となります(平均的な請求項数10の場合)。

但し、特許の出願審査請求料と設定登録料について、費用の減免制度があります。その場合、特許の出願から登録までのトータル費用213,900円は、次のとおり安くなります。
1/2に軽減される場合(中小企業、大学など)=113,950円
1/3に軽減される場合(小規模企業(法人・個人事業主)など)=80,620円

なお、手続を特許事務所(弁理士)にご依頼の場合、別途、代理人費用(特許事務所の手数料)が必要です。

 

【ご参考】もし当初から実用新案について技術評価を受けることが前提なら、しかも特許について1/2や1/3への軽減を受けられるなら、特許出願もご検討ください。詳しくは、特許か実用新案かの費用面からの検討をご覧ください。

 


特許と実用新案の費用の比較表

  • 典型的な場合の費用を示しています。追加手続、追加費用が発生することもあります。
  • 2023年9月27日現在の情報です。特許庁費用は、改定される場合があります。
  • 特許庁統計による平均的な請求項数10の場合を示しています。これ以外の場合についての特許庁費用は、特許費用(印紙代)実用新案登録費用(印紙代)をご覧ください。
  • 特許庁費用は、軽減又は免除される場合があります。詳しくはお問合せください。
  • 代理人費用(特許事務所の手数料)は、事務所により異なります。発生タイミングも事務所により異なることがあります。小山特許事務所の場合、特許費用(印紙代&手数料)実用新案登録費用(印紙代&手数料)をご覧ください。
  • 書面(紙)で手続される場合、手続にもよりますが、別途、電子化手数料が必要です。
  • プリントアウト用pdfファイル特許と実用新案の費用の比較

特許と実用新案の費用の比較

以上の事実に基づき、特許と実用新案のどちらにすべきかは、特許か実用新案かの費用面からの検討もご覧ください。

 


関連情報

 


(作成2023.09.27、最終更新2023.09.30)
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